人気のない夜の校舎。窓から差し込む月明かりだけが、長い廊下をぼんやりと照らしていた。部活帰りの女生徒は、小さなバッグを抱えて足早に歩く。校舎に残っているのは、もう自分ひとりだと思っていた。
その時だった。足音を吸い込むように、廊下の空気がぬるりと重くなる。壁の一角――いつもと変わらぬ白い漆喰に見えた部分が、じわりと脈動した。
女生徒は気づかないまま通り過ぎようとする。しかし、壁に擬態していた“それ”は静かに蠢き、赤黒い触手を無音で伸ばした。まるで廊下そのものが獲物を待つ巨大な口であるかのように。
瞬間、彼女の足首に冷たく湿った感触が絡みついた。驚いて振り返る間もなく、触手は一気に締め上げ、体を持ち上げる。悲鳴は喉の奥でかき消され、廊下の静寂に吸い込まれた。
壁の表面はずるりと裂け、暗く蠢く内部が口を開く。女生徒は抵抗もむなしく、その口腔めいた空洞へと引きずり込まれていく。壁に溶け込みながら姿を消す直前、彼女の瞳だけが恐怖に見開かれ、月光を反射していた。
そして廊下は再び静けさを取り戻し、ただの無人の学校の一角に戻った。まるで、何事もなかったかのように――。
前:pixiv #133848649 »次:pixiv #134232633 »
There are no comments.
捕食巣型触手淫魔
人気のない夜の校舎。窓から差し込む月明かりだけが、長い廊下をぼんやりと照らしていた。
部活帰りの女生徒は、小さなバッグを抱えて足早に歩く。校舎に残っているのは、もう自分ひとりだと思っていた。
その時だった。
足音を吸い込むように、廊下の空気がぬるりと重くなる。壁の一角――いつもと変わらぬ白い漆喰に見えた部分が、じわりと脈動した。
女生徒は気づかないまま通り過ぎようとする。
しかし、壁に擬態していた“それ”は静かに蠢き、赤黒い触手を無音で伸ばした。
まるで廊下そのものが獲物を待つ巨大な口であるかのように。
瞬間、彼女の足首に冷たく湿った感触が絡みついた。
驚いて振り返る間もなく、触手は一気に締め上げ、体を持ち上げる。
悲鳴は喉の奥でかき消され、廊下の静寂に吸い込まれた。
壁の表面はずるりと裂け、暗く蠢く内部が口を開く。
女生徒は抵抗もむなしく、その口腔めいた空洞へと引きずり込まれていく。
壁に溶け込みながら姿を消す直前、彼女の瞳だけが恐怖に見開かれ、月光を反射していた。
そして廊下は再び静けさを取り戻し、ただの無人の学校の一角に戻った。
まるで、何事もなかったかのように――。
前:pixiv #133848649 »
次:pixiv #134232633 »